なぜフュージョン?

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 今、ビッグスクーターはブームである。10年前にこれだけのビッグスクーターが街を走っていたか?(もっとも10年前はフュージョンとフリーウェイしかなかったわけだが…)確かにビッグスクーターはブームである。しかし、そのブームの中でどの車種を選ぶかということになると、ほとんどの人はマジェスティ、フォーサイト、スカイウェイブの中から選択するだろう。最近フォルツァも発表され、選択肢は4つになった。そして、我がフュージョンは、昨年15年に及ぶ生産を終了し、ホンダのカタログから消えて行った。

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 私は今のフュージョンで4台目である。3台目を購入する時点ではマジェスティが登場していた。しかし、3台目も4台目もフュージョンを選んだ。理由は単純、好きだからである。
 最初にフュージョンを買ったとき、選択基準は、通勤が主目的だったため、「スーツで乗っても違和感がない」「積載能力が高い」「四輪と対等に走れる」というものだった。当時これを満たすのは軽二輪クラスのフュージョンとフリーウェイ、積載能力と車体の大きさから必然的にフュージョンを選んだ。コンパクトな車体だと、四輪ドライバーから原付に見られてあおられて危険なのではないかと思った。250ccとは思えない車体を持つフュージョンは、その点で安心感があった。もう1つフュージョンにひかれたのは、どことなくゴールドウィングの面影があったからである。

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 さて、では、最新鋭のスクーターを選ばず、フュージョンにこだわるのはどうしてか。まずは、その性格である。フュージョンのツアラー的な性格は、まだ継承している車種はないだろう。あのゆったりポジションと大きな車体はフュージョンだけのものである。ツアラーには鋭い加速も軽快なフットワークも第一に求められるものではない。加速で他車において行かれようと、峠で離されようと、どっしりと腰を下ろしてマイペースで走る。そして走り続けても疲れない。これがフュージョンである。実際には通常の走行をする限りはけっこうキビキビ走る。走行性能を第一の選択基準にするならば、あえてスクーターに乗らず、一般のモーターサイクルを選べばよいのだ。スクーターに求めるのは走行性能だけではないはずだ。

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 積載能力が高いことも重要なポイントだ。当時としてはフュージョンのトランクスペースはかなり大きかった。また、通常のスクーターのようにシート下ではなく、リヤにトランクスペースを備えていることも気に入っている。そのレイアウトが、あの独特のボリュームのあるフォルムを生み出すことにもなっている。ただ、リヤタイヤ上に位置するため、見た目ほど容量はなく、現在の水準では狭い方になってしまう。しかし、それはトップボックスを装着することで解決する。そして、フュージョンの場合、トップボックスを装着したことでデザインが完成するようなところがある。トップボックスがある方が明らかに見た目のバランスもいいのである。装着しても他車のようにボックスが後に飛び出すことがなく、全長もほとんど変わらない。コストの問題もあるだろうが、トップボックスを標準装備したモデルがカタログにあってもよかったのではないだろうか。そうすればツアラー的性格が一層強調され、他車との差別化が図れ、ひょっとしたらもう少し生き延びることができたのではないだろうか。

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 そして、実はこれが一番のこだわりでもあるのだが、右足操作のリアブレーキである。マジェスティ以降のビッグスクーターは、すべてリアブレーキは左手操作になっている。雑誌の試乗記でも、しばしばフュージョンのリアブレーキは不評を買っていた。スクーターには不向きなシステムと酷評されることも少なくなかった。しかし、私はこれが大変気に入っている。マジェスティが出たときに、確かに興味を持ったのだが、リアブレーキが手動操作だったために、次もフュージョンを購入することになった。操作性は手動の方がいいのだろう。だが、スクーターといえども「自動二輪」なのだから、自動二輪の操作を残しておいてほしいと思う。操作方法がまったく原付スクーターと同じというのはイヤだ。そう、イヤなのだ。まったく好みの問題である。理論的に右足操作が優れていると説明することはできない。ただ、スクーターではあるけど自動二輪に乗っているのだという自己満足が得たいだけである。それに、私にとっては、低速時に両足をベタづきできることよりも、走行中に左手がフリーになることの方がメリットが大きい。一般のモーターサイクルからスクーターに乗り換えたり、その逆の場合など、なるべく操作方法が共通した部分が多い方がいいような気もするのだが。四輪のオートマチック車で左足ブレーキの習慣をつけた人がマニュアル車に乗ると戸惑うように、体に染み付いたことを解除するには少し時間がかかるだろう。教習所や試験場の車両が右足リヤブレーキの車両である限り、自動二輪車は右足リヤブレーキがいいと思っている。

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