わがRT84と同じ6R-B型エンジンを積む、マークII1700SLハードトップの試乗記事である。

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CARグラフィック'70年5月号

ROAD・IMPRESSIONS

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トヨペットコロナマークII1700ハードトップSL

C/Gテスト・グループ


後を走るのはテスト中のRT82型コロナ(80系初期型1600)

 5年半ぶりにフル・モデルチェンジされたコロナが,従来の1500に加えて1600クラスまで進展したのに伴い,マークIIシリーズは1600に代わって1700モデルが新しく登場,1900との格差をせばめた.すなわち新マークIIシリーズの編成は,エンジン容積では1700(95HPと105HP)と1900(100HP,105HP,115HP,140HP),ボディ形状は4ドア・セダンと2ドア・ハードトップ,そしてワゴンとがあり,長速モデルとしてDOHCの1900GSSが存在する.さらに細かく分けるなら,トランスミッションはマニュアルが3段コラム,4段フロア,5段フロア,トヨグライドは2段コラム,3段コラム,3段フロアとがあり,営業用車(1600)を除いて全部で33車種のマークIIシリーズが成り立つわけだ.シリーズの再編成とともに,マークIIは細部のマイナーチェンジも受けている.まずボディ外観ではフロントグリル,テールランプなどを変更し,エンジンのパワーアップにより性能向上,1900モデルにGL,GSLを設けるなど装備品の向上,その他細部の改良である.今回のロード・インプレッションにとりあげたのは,新しい1700モデルの,最も高性能なハードトップSLである.

 新1700エンジンは,従来の4気筒SOHC・1600cc 7R型のストロークを延ばして1707ccとしたもので,シングル・キャブレターで95HP/5500rpmを得る6R型,SL用6R-B型はツインSUキャブレターで105HP/6000rpmのパワーを発生する.このハードトップ1700 SLは東京価格78.3万円であり,旧1600ハードトップSLよりも1.65万円高く,1900ハードトップGSL(そして旧1900ハードトップSL)より6.65万円安い.6.65万円の価格差は,パワーウィンドー,モーターアンテナ,ラジオの自動選局システム,デフォッガー(最新モデルは熱線プリント式が主),メ一ターランプの照度調節システム,後席のアームレスト,コンソールの木目パネルなどが省かれたもので,サーボつき前輪ディスク・ブレーキ,タンデム・マスターシリンダー,コラブシブル・ステアリングコラム,浮き上がり防止フィンつきのワイパーブレードなど必要な装備は標準で備わっている.

 新1700SL用エンジンはツインSUキャブレターと9.5の圧縦比で105HP/6000rpm, 14.5mkg/4000rpmを発生するが,これに対して1900GSL用は,今回のマイナーチェンジを機に圧縮比を高める(10.0→10.2)など改良の結果,今までより5HPアップの115HP/6000rpm, 15.5mkg/4000rpmを得る(旧1900SLは110HP/6000rpm, 15.5mkg/4000rpm).4段フロアシフトのギア比はいずれのモデルも同じで(3.674, 2.114, 1.403, 1.000, R4.183),ファィナル・ギア比のみ1900が3.700,1700が3.900と異なる.したがって1700SLは,1900GSLとは10HP,旧1900SLとはわずか5HPの出力差しかなく,車両重量は1700が1000kgに対して1900GSLは1030kg,旧1900SLは1020kg(いずれもハードトップ)であることから推測できるとおり,パワフルで,動力性能はそれらに劣ることないといえる.エンジンの性能も,ブロックをはじめ多くの部品が同じことにより,ほとんど同じものをそのまま受け継いでいる.アイドリングは700-800rpmの間を上下してややラフであった(アクセルワイアのフリクション大のためか,時として1500rpmくらいから落ちなかった)が,スロットルを踏み込めばマキシマム回転まで吹きは軽く,スムーズである.タコメーターのレッドゾーンは6500rpmから始まり(1900も同様),ここまで踏み込むと,スピードメーターの針は1速で52km/h,2速90,3速136を指した.参考までにわれわれがテストしたC/GマークII1900ハードトップSLは,第5輪を用いた実速度で50,90,135まで引っ張ることができた(テスト・リポートは本誌68年12月号91ページ)このとき1900SLの0-400m加速タイムは17.9秒を記録し,今回の1700SLは18.1秒にとどまった.両車のパワーの差が表われたというよりも,今回の試乗車が全くの新車状態にあり,まだなじみの出ていないことが原因だろうと思う.カタログの最高速は170km/hであり,谷田部のテストコースでは,フルスロットルで半ラップ(1周5.5km)するころ,メーターの針は171km/hに達していた.もともとこのマークIIは,高速走行時の方向安定性に優れているのだが,これも同様にフルスロットル走行でも全く不安感をいだかせない.エンジンのメカニカルノイズはおおむね低い方であるが,5000rpmをこえるころから排気音か高まった.

 このエンジンも1900SLと同様,2000rpmを少し下回るところから5500をこえる広い範囲にわたって最大トルクの90%以上を発生し,ギア比もよくマッチしており,低速から高速域まで実に柔軟性に富む.したがって,今回は追い越し加速タイムは計測しなかったが,広い速度範囲でほぼ同タイムを出せるものと,1900SLのテスト経験から想像できる.追い越しなど急加速時のレスポンスは,あくまでも1900モデルと比べて時として物足りなさを感じるが,実用上は充分以上の強い加速力が得られる.ひじょうにフレキシブルな特性ゆえに,混んだ街なかの走行は,トップとサードのみでほとんどこと足りる.トップギアはだいたい1300rpm(約35km/h)くらいから,スムーズな加速が可能である.

 ギアボックスはシンクロがひじょうに強力であり,どんなに素早いシフトにも負けることはない.クラッチは,従来のSLモデルはコイルスプリング式であったのと異なり,クラウンと同じ9インチ径のダイアフラムを採用,切れを良くするとともにペダルの踏力軽減がはかられた.したがって発進は従来モデルよりもいくらか容易になったが,アクセルペダルは依然として重く,静かなスタートにはまだ微妙なフットワークを必要とする.それと,クラッチとブレーキペダルはトーボードからやや高いのに,アクセルペダルは低く,ヒール・アンド・トウの際にはスロットルの踏み込みが足りなくなりがちであった.また,タイム測定時などのレーシング・スタートでは,急激な駆動トルクのために後車軸があばれる,いわゆるリアアクスル・トランプが起こりがちなのも従来と変わらない.
 燃費は,タイム測定を含んで谷田部と都心部との間で7.3km/l を記録,これも1900SLと大差ないデータであった.

 サスペンションやブレーキは従来モデルから大きな変更を受けていない.平凡なサスペンションのわりには操縦性に優れ,バリアブル・レシオのステアリングは適度の重さを保ち,強いアンダーステアの性格を有する.サーボつき前輪ディスクのブレーキは,後輪の早期ロックを防ぐPCVバルブを備え,踏力は軽く,じわりと確実に効く優れたもの.乗り心地は重量感があるよいもので,特に前席はたっぷりとしたシートのおかげもあり快適だ.試乗車はオプションとされているラジアルタイア,BSのスーパースピード10(165SR13)をつけていた.このタイアはもっぱら硬いことで定評(?)があり,事実かなり路面の不整をひろったが,その振動と音は直接的なものではなく,予想したほど乗り心地はそこなわれなかった.やはり未舗装路では相当にゴツゴツきた.その反面,コーナリング時のロードホールディングは,いっそう向上している.

 室内で目新しいのは,ダッシュ中央下に新設された,フレッシュエアのアウトレットである.マークIIは今までもダッシュ両端に,顔および足もとへフレッシュエアを送るアウトレットが4つ設けられていたが,今回はさらに中央へ大きなものが追加され,夏季のドライブはいっそう楽になった.いずれのものも風向きが自由に変えられるのもありがたい.先回のリポートでは,イグニッションキー(コラムにありロックと兼用)がONの位置で外の光線を反射して,警告灯でもついたのかと錯覚すると書いたが,今回の改良で角度が変わり,その心配はなくなった.同時にステアリングロック機構のOFF位置がなくなり,必ずLOCK位置まで回さないとキーの脱着はできなくなった.したがってロックし忘れがないわけだ.標準装備のセンターコンソール(1700は黒)のポケットにはフタが新設され,後端はシートベルトのバックルを収める部分が独立している.シートベルトは前席左右に3点式が備わるが,ロック解除がプッシュボタン式に変わった.相変わらずベルトはリトラクターつきで,かなり強いスプリングのため,腹部を締めつけられて長時間使用にたえない.適当な長さでロックできるようなしくみにできないものだろうか.シートベルトは単なる飾りではなく必需品なので,ぜひとも改善を願いたい.もうひとつ,ライティングスイッチは依然としてダッシュの遠い位置にあり,しかもノブは小さく,操作しづらい. ウインカーレバーに切り換えスイッチを組み込むとか,せめて力ローラやクラウンのように,指のかけやすい大きなノブに変えるとかできないものだろうか.その他,今回の改良点としてあげられるのは,従来はエンジンフードを閉めるとき,いちいちロック解除の操作をしなければならなかったが,サポート部分の変更で,一挙動で開閉ができるようになったこと,室内のドアロック・ボタンは16cmほど前方へ移動し,操作性が向上したことなどである.ボディ外装関係では,フロントグリルとテールランプ,リアクォーターのルーバー,ホイールキャップなどのデザイン変更がある.今までアクが強すぎるといわれていたフロントグリルは,少なくともハードトップに関してはスマートになり,好評であった.

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